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スミスチャートによる直並列変換

 高周波回路設計にスミスチャートはよく見られる。スミスチャートはインピーダンスを一つの円内に表現するグラフである。このグラフには線の引き方が二種類ある。教科書に最初に出てくるのはインピーダンス表現をとるインピーダンスチャートである。横方向を抵抗分Rに、縦方向をリアクタンスXに対応させたグラフである。これをアドミタンス表現したアドミタンスチャートも存在する。インピーダンスチャートを左右対称にしたグラフである。インピーダンスの線とアドミタンスの線両方が引かれたものをイミタンスチャートといふ。

 イミタンスチャートに、一つインピーダンスの点を記してみる。この点はアドミタンスの軸に従って読めばそのアドミタンスも表示されてゐる。これは当然のことである。別の言ひ方をすると、直列回路で表現されたものを並列回路に読み替へることができるのである。つまり直並列変換がこの表を利用することにより直ちに行へる。

 以下その実例をスミスチャートソフトウェアであるMr. Smithを利用して示す。

実例

smith1
 50オームの抵抗と2pFの容量が直列になったもの(Fig. 1)を並列接続(Fig. 2)に変換する。周波数は1GHzとする。
smith2
 2pFのリアクタンスは1GHzで-79.6Ωとなるから、インピーダンスZは50-j79.6となる。この点をソフトウェアにプロットする。
smith2
 これをアドミタンス表示に変へるとY=5.66m+j9.01mとなる。部品の定数に書き換へると、R2=177Ω、C2=1.45pFとなる。
 一つ注意することがある。直並列変換の対象はインピーダンス、アドミタンスの値であって、コンデンサの容量、コイルのインダクタンスではないことだ。リアクタンス素子のインピーダンスは周波数により変化するからである。これを確かめる。
 周波数を500MHzに変へる。2pFのリアクタンスは-159ΩとなるからインピーダンスZは50-j159となる。これをアドミタンスに読み替へるとY=1.80m+j5.72mとなり、部品の定数に書き換へると、R2=556Ω、C2=1.82pFとなる。これは1GHzの時と全く異なる。
以上

作成 H21.11.11