アレイアンテナの指向性
アンテナを規則的に多数配置すると合成された指向性を鋭いものにすることができる。
ここではアンテナを一直線に配置するリニアアレイアンテナ(linear array antenna)1の指向性を試算してみた。
1 学会では「アレイ」ではなく「アレー」と表記するやうである。
図: リニアアレイアンテナの配置
Scilabによる計算
配置するアンテナを等方性アンテナとして指向性をScilabで計算する。計算式は文献にあるアレイファクターの式を利用する。計算条件として、アンテナ数を8、間隔をλ/2とした。またアンテナには8分配された電力が給電され、位相は同相と仮定した。
図: 合成された指向性
グラフの横軸は方向を示す角度であり、アンテナを並べる直線に引いた垂線を基準とする。アンテナ列の正面方向が0度となる。
縦軸はdB単位の利得であり、最大利得に正規化したものである。
図: 指向性の角度の定義
このやうに等方性アンテナを8本並べると鋭い指向性が発生する。半値幅は約13度である。最大利得は9dBiと計算された。
MMANAによるシミュレーション
今度はアンテナシミュレーターMMANAで、実際に波長を設定し寸法を入れて計算してみた。
図: シミュレーションのアンテナ配置図
垂直に立てたλ/2ダイポールを8本、λ/2間隔で配置し、自由空間を仮定した。
図: 計算されたビームパターン
左のビームパターンは、アンテナ配置図に示すXY平面上でアンテナを回転させて得られる指向性であり、右のビームパターンは、XZ平面上でアンテナを回転させて得られる指向性である。
アンテナ利得は12.36dBiとなつてゐる。λ/2ダイポールアンテナの絶対利得が2.14dBiであることからScilabのシミュレーション結果と合はせると11.1dBi程度と試算される。しかしMMANAの計算は異なる。また水平ビームパターンもおよそ一致してゐるが差がある。これはアルゴリズムの差によるものと考へられる。
文献
- 吉田孝監修「改訂レーダ技術」電子情報通信学会編、4.5節、1996年10月
作成 H27.10.9