デジタルマルチメーターの性能比較2 確度と桁数
確度仕様が同じで桁数が異なるデジタルマルチメーターの測定誤差はどちらも同じであらうか。それとも桁数の多い機種が測定誤差は小さいのであらうか。ここでは測定範囲一桁ごとの平均測定誤差を計算すること*1によりそれを検討する。
比較仕様
ここでは5000カウントと50000カウントの機種を比較する。5000カウントのDMMとして三和電気計器のPC510aを取り上げ、それと確度仕様が同一で50000カウントの機種を仮想する。
Studied DCV Accuracy
Sanwa PC510a | Virtual Model | Accuracy |
50.00 mV | 50.000 mV | 0.12% reading + 2 digits |
500.0 mV | 500.00 mV | 0.06% reading + 2 digits |
5.000V, 50.00V, 500.0V, 1000V | 5.0000V, 50.000V, 500.00V, 1000.0V | 0.08% reading + 2 digits |
カウント数増加の効果
確度仕様には読み値の誤差率とレンジの誤差の二つの要素がある。DMMの測定レンジ下方ではレンジの誤差が相対的に大きくなり主な誤差要因になってゐる。レンジのフルスケールに近付くほど読み値の誤差率に誤差率は近付く。DMMのカウント数が10倍になると、その延長された範囲ではレンジの誤差がより小さく見える。
一桁当り平均誤差
一桁当り平均誤差の考へ方を簡単にまとめておく。各表示電圧について最大誤差率を計算する。表示電圧を常用対数表現し表示電圧1桁の幅を1とする。最大誤差率曲線がその下に作る面積は積分区間の平均誤差率を意味する。
下のグラフは青線が三和電気計器PC510a型の最大誤差率、赤線が50000カウントの仮想機種の最大誤差率である。50000カウントの仮想機種の誤差が小さいことがわかる。カウント数が1桁小さい機種の最大誤差率曲線を右に延長するやうな具合になってゐる。
下の表は1桁当りの平均誤差率を計算したものである。有効数字は4桁とした。
Range | Sanwa PC510a | Virtual 50000 count DMM |
1mV~10mV | 1.184% | 0.2182% |
10mV~100mV | 0.3015% | 0.1217% |
100mV~1V | 0.2564% | 0.08576% |
1V~10V | 0.2723% | 0.09972% |
10V~100V | 0.2723% | 0.09972% |
100V~1000V | 0.2723% | 0.09972% |
カウント数が一桁増えると平均誤差率が約1/3になることがわかる。
結論
確度仕様が同じであれば桁数の大きい機種が誤差は少ない。桁数が増えるほど、レンジの誤差の影響が小さくなり、読み値の誤差率に誤差が近付くからである。
以上
*1 「デジタルマルチメーターの性能比較 確度とカウント数について」
作成 H22.6.17