無線分野の技師が扱ふ技術領域
私が経験した無線機分野の仕事は電磁気学を大本にする理論に基づいた製品を作る仕事です。
大本の基礎は、物理学の一分野である電磁気学です。電磁気学を応用し工学段階に持ってきたものが電気工学、電子工学です。基礎的なハードウェアはこのレベルで作られます。その上に通信、情報方面の応用をした通信工学、情報工学が発達してゐます。
無線機は通信工学、情報工学を応用した通信機器の内、電波を利用する機器のことをいひます。
無線機に含まれる要素技術を回路で見ると大きく制御・電源・低周波・高周波に分けられます。
無線機器分野、最大の特長は高周波技術の応用です。技術の進歩に従ひ、扱ふ周波数はSHF帯(3GHz-30GHz)にまで高まってゐます。
また音声を扱ふ機器は低周波回路を持ちます。低周波からマイクロ波まで広い周波数帯域を扱ふのが無線機器エンジニアの特長です。
無線機分野の技師は高周波屋と呼ばれることもあります。但高周波機器といふと高周波加熱器、プラズマ装置なども含まれます。しかしこれらは通信工学、情報工学を応用した装置ではありません。別の分野です。
無線分野の技師の強み
無線機器はアナログ回路を多用します。アナログ回路には電源電圧による動作変動、温度による動作変動があります。設計において、使用する半導体の性質や回路の応答を確認しなければなりません。それは電子工学、電気工学の教科書の内容を意識することと同じです。
マイクロ波などの波長の短い領域の機器設計では、分布定数回路理論では対応が容易でない部分があります。それには電磁気学的検討が必要になります。
このやうに無線分野の技師は大本の基礎である電磁気学までしばしば行き来するといふ特徴を持ってゐます。
機器から発生する電磁雑音、外部からの電磁妨害については、電磁気学的な感覚で検討しなければならないのはいふまでもありません。このやうな問題の検討にも無線機器の技師は力強いものです。
以上
作成 H21.11.25