オームの法則に従はない実験
オームの法則に従はない実験を見たことがあった。それは次の構成の実験だった。
図1
使用した安定化電源は電圧計と電流計を内蔵してゐた。更に電源ケーブルでの電圧降下を監視するためにDUTの電源端子付近に電圧計を接続してゐた。
オームの法則に従へば、電流が大きければ電圧降下が大きく、電流が少なければ電圧降下は少ない。しかしこのときは電流が少ないときに電圧降下が少なく、電流が多いときに電圧降下が少ない結果が出てゐた。つまりオームの法則に反する結果であった。
これまで同じ機材を使って問題はなかったさうである。まづその現象を再現してもらった。実際に計器の表示はオームの法則に従はない値が出てゐた。こんな値であったと思ふ。
表1
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電源内蔵計器 |
DUT側計器 |
電圧 |
電流 |
電圧 |
DUT STBY |
5V |
測定限界以下
(実電流1uA以下) |
4V |
DUT ON |
5V |
300mA |
4.9V |
何が間違ってゐるのだらうか。接続されてゐる機器を触ってみると、あるところで変化が現れた。それは電源ケーブルのバナナチップの根本であった。電源は陸軍端子の出力端子を持ってゐて、そこにバナナチップを付けた電源ケーブルを接続してゐた。電線とバナナチップの接続部分が緩い。図2の赤丸の部分である。
図2
電線の向きが軽い力で変った。バナナチップのカバーを外すと電線と端子を接続するハンダが電線の周に沿って割れてゐた。ハンダが付いてゐたのは電線を差し込む穴の縁の部分だけで穴の内部にハンダは充填されてゐなかった(図3)。また電線の先端はハンダメッキ処理をしたままのきれいな状態であった。
図3
これは電源ケーブルの製造不良、ハンダ付け不良だった。実験用の電源ケーブルは部署の自家製だ。誰が作ったケーブルかはもう判らない。
ハンダづけの後に電線を引っ張る検査をすることにしてゐたが、それをしてゐれば不良判定になりさうなハンダ付けであった。
このことから金属が緩く接触してゐる場合は接触抵抗がオームの法則に従はないことがあると知った。
以上
H21.9.2