解析箱の底面積を100mm×100mm、センサー電極形状を10mm角、電極から解析箱までW=0.5mm、l=45mmの配線、解析箱の高さを電極の上下それぞれ50mm、電極の上下にある誘電体を空気、解析周波数を10MHz一点と設定した。配線が解析箱に接する箇所にport 1を配置し、ここで静電容量を評価する。図1に解析する形状の三次元表示を示す。
図 1
解析終了後、結果表示ソフトウェアemgraphを起動し、解析値の表示設定をZParams、Magnitudeにしインピーダンスを表示させる。結果は|Z|=20677Ωとなった。これをXc=1/(ωC)の公式を使ひ静電容量Cを求めると0.770pFとなる。これは配線を含んだ静電容量であることを注意しておく。
Sonnetが解析の対象とする領域は長方体の金属箱の内部である。箱の電位はGNDである。センサー電極が電荷を持つと仮定してそこからの電気力線は、点電荷から無限遠に向って輻射
*状に延びる電気力線(図2)のやうに、センサー電極から箱の壁に向って延びてゐると推測される。
図 2
ここで注意すべきは、解析箱の寸法を小さくし電極から壁面までの距離を短くすると静電容量は大きくなることである。
解析箱とセンサー電極の間にコンデンサーが形成されてゐると見れば、コンデンサーの電極間距離を短くすることになるから静電容量は大きくなる。このことは容易に理解できるであらう。
実際にセンサー電極の上下の寸法などを小さくしてシミュレーションすればこのことを確かめることができる。
つまり周囲にGNDのないセンサー電極の静電容量は周辺導体の影響を受け容易に変化する。従って静電容量の、実機での再現性はよくない。
- *輻射
- 「輻射」といふ単語は敗戦後の国語改悪により「放射」に改められた。これは「輻」の文字が当用漢字でないといふだけの理由であった。それ以前、放射の語は物を放る場合の放物線の意味のみに使用してゐた。私はこのやうな単語について本来の用語を使用する。
次にセンサー電極の周囲を囲むやうに同一面状にGNDがある場合を解析する。解析箱の底面積、センサー電極形状、電極から解析箱までの配線、解析箱の高さ、電極の上下にある誘電体、解析周波数は2.1と同一である。センサー電極と配線を、1.0mmの間隔を取ってGND面で取り囲んだ。図3に解析する形状の三次元表示を示す。
図 3
解析終了後、2.1と同様にemgraphにてインピーダンスを表示させる。結果は|Z|=10874Ωとなった。静電容量Cは1.46pFとなる。周囲にGNDが全くない場合に比べ静電容量は約二倍になった。
静電容量が増加したのは、センサー電極とGNDの距離が短くなったためである。2.1ではGNDまでの距離は解析箱壁面までの距離であった。それが1.0mmまで接近した。また電気力線は電極とGNDとの間隙に集中し、壁面に至る電気力線は少なくなる。
それを確認するために解析箱の高さを低くして解析をした(図4)。電極上下の誘電体の高さを5.0mmにした。結果は
|Z|=10030Ω、静電容量Cは1.59pFとなる。解析箱の天井と床が電極に接近したことによる静電容量の変化はたかだか+9%であり、このことから解析箱の壁面に至る電気力線は非常に疎らであることがわかる。
図 4
次にセンサー電極の裏面にGNDがある場合を解析する。t=1.6のガラスエポキシ基板(FR-4)を使ひ裏面にベタGNDを配置した状態である。解析箱の底面積を100mm*35mm、センサー電極から上の高さを90mmとした他、電極から解析箱までの配線、解析周波数は2.1と同一である。図5に解析する形状の三次元表示を示す。
図5
結果は|Z|=2592Ωとなり、静電容量Cは6.14pFとなる。周囲にGNDが全くない場合に比べ静電容量は約七倍になった。
センサー電極の面と対向する位置にGND面を配置すると静電容量は著しく大きくなることが分かる。電気力線も電極面とGND面との間隙に集中する。物理の教科書に出てくる平行平板コンデンサーを想像されたし。解析箱の壁面に至る電気力線は2.2の場合よりも更に疎らであることが予想される。
最後に2.3の状態に、電極と同一面のGNDを付加した場合を解析する。電極の囲み方は2.2と同じである。図6に解析する形状の三次元表示を示す。
図6
結果は|Z|=2474Ωとなり、静電容量Cは6.43pFとなる。周囲にGNDがない場合の2.3に対して、僅か+0.29pFの変化である。同一面のGNDへの電場は0.29pF分しかない。このことから電場は、センサー電極と裏面GNDの間に殆ど集中し、その他は弱いことが分かる。
2.2と2.3の例はいづれも電極付近にGNDを配置しそれとのコンデンサーが形成されてゐる。それにより電極自体の静電容量が増加した。2.2の場合は線状のコンデンサーと見ることができる。平行電線、撚り線の間に発生する静電容量がその例である。2.3は面状のコンデンサーである。
線は一次元に対して面は二次元であるので、線より面の作用が大きいことが理解できる。
|
コンデンサーの形態 |
作用の度合 |
具体例 |
例2.2 |
線状コンデンサー |
一次元 |
平行電線 |
例2.3 |
面状コンデンサー |
二次元 |
コンデンサー |
例2.4 |
線状コンデンサー
+面状コンデンサー |
二次元>>一次元 |
|