第5章 反射

5−1 反射
5−2 多重反射

5−1 反射

5−1−1 反射係数

 伝送線路とそこに接続された負荷のインピーダンスが異なると反射が発生する。反射の大きさを示す指標として反射係数 Γ (ガンマ)がある。これは電圧または電流でみた、入射波に対する反射波の大きさを示すものである。
 伝送線路の特性インピーダンスを Z0 、負荷のインピーダンスを ZR とすればそこでの反射係数は次の式で表される。

 Γ = (ZR - Z0) / (ZR + Z0)

5−1−2 整合

 この式に数字を入れて様子をみる。伝送線路の特性インピーダンスが 100Ω、負荷が 100Ω の場合は、

 Γ = (100 - 100) / (100 + 100) = 0

反射係数は0となり反射はない。全ての信号が負荷に消費される。
 インピーダンスが一致してゐることを整合(マッチング)してゐるといふ。反射を少なくするためにインピーダンスを調整することを「整合を取る」といふ。

5−1−3 不整合

 次に負荷抵抗が大きくなり 1kΩ の場合は、

 Γ = (1000 - 100) / (1000 + 100) = 900 / 1100 = 0.818181....

負荷に到達した信号は約 82%の大きさで反射される。残りの 18%分のエネルギーが負荷に消費される。
* 反射係数の次元は電圧または電流であり電力ではない。

 次に負荷抵抗が小さくなり 10Ω になつたときは、

 Γ = (10 - 100) / (10 + 100) = -90 / 110 = -0.818181....

負荷に到達した信号は正負が反転し約 82%の大きさで反射される。残りの 18%分のエネルギーが負荷に消費される。

 反射係数の符号は特性インピーダンスと負荷インピーダンスの大小関係により決る。

5−1−4 全反射

 負荷のインピーダンスが 0 か無限大であるとき反射係数の絶対値は 1 になり全てのエネルギーが反射される。
 負荷インピーダンスが無限大の時、式を変形して、

反射係数は1となり 100%の大きさで全てのエネルギーが反射される。
 負荷インピーダンスが 0Ω の時は、

 Γ = (0 - 100) / (0 + 100) = -1

反射係数−1で反転された信号が100%反射される。

5−2 多重反射

5−2−1 反射波の往復

 信号源と負荷を伝送線路でつないだ下記の回路を考へる。
 信号源には出力インピーダンスがある。出力インピーダンスと伝送線路のインピーダンスが一致すると反射なく信号源から線路にエネルギーが供給される。
 ここでは信号源のインピーダンスを Zs 、伝送線路の特性インピーダンスを Z0 、負荷のインピーダンスを ZR としてゐる。

構成図の下にある線図は波の進みを示してゐる。
@信号源からの信号が負荷 ZR に進む。
A伝送線路と負荷は不整合であり一部が反射される。反射波は信号源に戻る。
B伝送線路と信号源も不整合であり、反射波は信号源に全て吸収されず、再び反射されて負荷側に進む。
C負荷で再び反射される。
以下同様に繰り返し。

 全反射でなければ、反射の度に反射波の大きさが小さくなる。従つていつかは無視できるほどの大きさになり、値が収束する。

5−2−2 反射波を詳しくみる

 改めて下記の回路で信号源 Zs、負荷インピーダンス ZR の大小関係を変へて反射波の変化を見る。
信号源のインピーダンスは純抵抗とし電圧 E の電源につながるものとする。
またスイッチは時間 t=0 に接続されるものとする。

以下の図は、伝送線路上の波の様子を帯状に表現したものである。

  • Zs = Z0 、ZR != Z0 の場合

 Zs = Z0 であるので信号源側で反射は起こらない。負荷側で反射が起こる。
(a)の段階は、電圧 E / 2 で負荷に信号が向かふ。
(b)の段階で、負荷に到達した信号は反射係数 ΓR で反射され、反射波の大きさが ΓR * E / 2 となる。後から進んでくる信号源からの信号と加算されて電圧は大きくなる。
電流の反射波は信号源から進む波と逆向きであり電流を減らす。
(c)の段階では反射波が信号源に到達し、信号源と線路は整合が取れてゐるので反射がない。以後変化はない。
電圧は (1 + ΓR) * E / 2 で一定となる。

  • Zs != Z0 、ZR != Z0 の場合


 次は信号源、負荷共に整合されてゐない場合。
(a) の段階では、信号源と線路のインピーダンスが不整合であるため、前の例に比べ線路に供給される信号は反射の分、(1 - Γs) 倍に少なくなつてゐる。
(b) 負荷で反射係数 ΓR で反射される。
(c) 信号源で反射されるが大きさは小さくなる。
(d) 負荷で反射されるが大きさは更に小さくなる。

  • Zs = 0 、ZR = ∞ の場合


 次は信号源、負荷共に全反射の場合である。信号は吸収されないのでいつまでも線路上を往復する。
負荷側と信号源で反射の様子が異なる。負荷側はインピーダンスが無限大であるため同じ大きさで反射される。一方信号源はインピーダンスが 0 であるためは反転して反射される。

(a)の信号の大きさは、信号源のインピーダンスが 0 であるから E となる。
(b)の段階は負荷側で100%反射された波が戻つてくる。
(c)の段階では、信号源インピーダンスが0であるため、負荷からの反射波は符号が反転し負の値になつて反射される。元の波形を削り取るやうに波は進行する。
(d)の段階では、(c)で負の値になつて反射された波が負荷側でそのまま負の値で再び反射される。やはり元の波形を削り取るやうに波は進行する。
(e) の段階では(d)で戻つてきた負の値の負荷からの反射波が反転され正の値になり再び反射される。これは(a)と同じ状態である。以後は同じことの繰り返しとなる。

以上

文献

  • 武部幹「回路の応答」コロナ社、昭和56年4月、「6.分布定数回路の応答」
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